令和7年6月12日の定時評議員会及び臨時理事会で日本調停協会連合会の理事長に選定されました江口 十三郎(えぐちじゅうさぶろう)でございます。
調停制度は、日本の国民性に合った紛争解決方法として、その歴史は既に100年を超えています。江戸時代には、奉行所の選任した第三者(扱人)が当事者の間に入って和解させる「内済(ないさい)」という紛争解決制度があったそうです。また、明治時代には、当事者や証人の話を聞いた判事補が解決案を決めて当事者を説得して納得させるという「勧解(かんかい)」という解決制度が行なわれました。これらは話し合いによる互譲を尊重する国民性に根付くものでしょう。
「調停」という名前の制度は、大正11年に作られた借地借家調停法に始まります。訴訟(裁判)は、時間や費用がかかり、勝ち負けで当事者間に不和も生じるため、借地借家のように貸主借主の関係が続くものには不向きで不便でした。そこで関係を継続できる平和的な解決手続として、話し合いと合意に基づく調停制度が新設されたのです。
国民の有識者である調停委員と、法律の専門家である調停主任(裁判官・調停官)で構成される、調停委員会が当事者の合意を目指し、合意形成が進まない場合にも、調停委員会が適当と認める調停条項を当事者に示すなどして、説得を図り、譲り合いを求める調停制度の誕生です。
戦後、日本国憲法が制定され、価値観も主権者も変わりました。しかし、調停制度は、戦前も戦後も、話し合いと互譲と合意という変わらぬ枠組みで続いています。
現在は、借地借家だけでなく民事事件全体について民事調停の申立てが可能です。また、離婚などの家事事件についての多くは、裁判ではなく家事調停から始める調停前置主義が採られています。
この調停制度は、申立の簡便性・安価性、審理の簡易迅速性・秘密性、解決の柔軟性・妥当性・平和性など、国民が身近に利用でき、社会のニーズに沿う利点があります。
日本調停協会連合会は、このように我が国の国民性に合った紛争解決方法である調停制度の維持・発展に寄与するために、全国の調停委員からなる団体(調停協会)が協力して運営する公益財団法人です。
現在は社会のデジタル化、司法のウェブ化に適合すべく、組織・事業・運営のブラッシュアップを図っております。
調停制度を利用する国民の皆様に、調停制度の利点をご活用頂けるよう、尽力してまいる所存ですので、調停制度と当会へのご理解を宜しくお願い申し上げます。
令和7年6月吉日
